サイボーグ戦隊の新規メンバー3体の実戦テストが終了した。いろい ろと問題点はあったが、とりあえず宇宙軍司令部からの命令で、宇宙 における最初の作戦に投入されることになった。宇宙母艦オリンポスの 司令官であるヘラクレス提督がサイボーグ戦隊のメンバーを前に本国 の宇宙軍司令部より届いた作戦内容を伝達した。
「いいか、よく聞け。君たちに任される、最初の本格的な作戦だ。作戦の 目標は機械生命体の支配する惑星ゴルゴーンの首都にある中枢コンピ ュータだ。惑星ゴルゴーンでは10年前、コンピュータとコンピュータ制御 のアンドロイド達による大規模な反乱が起こった。その当時10億人いた ネオガイア星人の植民者たちは全て機械生命体の奴隷にされ、現在で も半分の約5億人が生き残っている。彼らが奴隷状態のまま機械生命 体の人質になっているため、わが宇宙艦隊は思い切った攻撃が出来な い。そればかりか、宇宙船がゴルゴーンに接近しただけでコンピュータ が影響を受け、コントロール不可能になる。今回の作戦では諸君たちサ イボーグ戦隊が、極秘裏に惑星ゴルゴーンに潜入し、諸悪の根源であ る中枢コンピュータを破壊してもらいたい。それによって5億人のネオガ イア星人が解放されるのだ」
もともと捕獲されて無理矢理改造された地球人サイボーグにとって、ネ オガイア星人の植民者など、どうなってもよいのだが、命令には逆らえ ない。5体のサイボーグは、イカロス司令とタンタロスとともに、惑星ゴル ゴーンの宙域に向かうことになった。それに緊急時のサイボーグの修 理のために宇宙拷問研究所のアンドロメダ女医が出向扱いで同行す る。彼らは宇宙軍司令部より迎えに来た高速巡洋艦『スパルタ』に移乗 し、地球から3000光年はなれた惑星ゴルゴーンへと向かった。
地球から数度のワープを行い、高速巡洋艦『スパルタ』は惑星ゴルゴーン の宙域に到着した。すでにそこには30隻あまりのネオガイア星の宇宙艦 艇が集結しており、陽動作戦を行うことになっている。ネオガイア宇宙艦 隊とゴルゴーンの無人攻撃衛星の間で戦闘が始まった。その間に『スパ ルタ』は惑星の夜の側に回り込む。あまり惑星に接近し過ぎるとコンピュ ータが影響を受けておかしくなるため、長時間は滞留できない。明日香= 健吾、優香、麗美、渚沙、圭織の5体のサイボーグは『スパルタ』の格納 庫で大気圏突入用の装備の支給を受けた。ゴルゴーンの近くではコンピュ ータ制御の瞬間物質移送機は誤作動の危険があるため使用出来ない。 昔ながらの方法で大気圏の突入し、惑星に降りるしかないのだ。5体が 支給されたのは人間一人が入れるぐらいの薄い特殊合成物質でできた 透明の風船と、パラシュートの入ったバックパックだった。
「それを着て、大気圏に突入しろ。高度1000メートルで自動的にパラシュ ートが開くようになっている。」
イカロスが説明した。5体のサイボーグに全裸で大気圏に突入しろと 言っているのだ。さすがに全員青くなったが、命令には逆らえない。今 回は反乱の危険があるため、アンドロイド部隊の護衛もない。透明の 風船に入った5体は次々にカタパルトから射出されて行った。
「きゃあああ!」
「助けてええ。怖いよううう!」
優香や麗美が絶叫している。全裸で生身のまま大気圏に突入するの は想像を絶する恐怖だった。5体は吸い込まれるように地表めがけて 落下していった。
「落ちるうううう!」
「熱い、熱いよお!」
大気との摩擦で風船の表面が赤く燃え上がった。優香、麗美、圭織の 3体は恐怖のあまり風船の中でオシッコをもらした。人間循環器である 圭織はオシッコを鼻の穴から再び吸引したが、優香と麗美は風船の 中に飛び散った自分のオシッコを全身に浴びることになりオシッコま みれになった。さすがに歴戦の明日香=健吾と、真性サディスト女王 様の渚沙は動じなかった。地表から高度1000メートルでオートシステ ムが作動し、パラシュートが開いた時、優香、麗美、圭織の3体は気 を失っていた。
「首都上空ニ侵入者ヲ確認。ロボットパトロール迎撃セヨ」
ゴルゴーンの機械生命体を支配する中枢コンピュータより檄が飛んだ。 ロボットパトロールの空中パトカーが出動し、パラシュートでゆっくりと降 下してくる5体のサイボーグに襲い掛かっていく。動きの取れないサイボ ーグ達は、絶好の標的である。
「このままではやられてしまうわ。健吾、戦うわよ!」
明日香が、今や自分の肉体の半分である健吾に言った。
「おお!明日香、俺たちの力を見せ付けてやろうぜ」
明日香と文字通り一心同体になった健吾は幸福だった。明日香は右手 のレーザーサーベルをふるって大気圏突入用の風船とパラシュートを切 り離し、背中の半重力装置を作動させた。5体のサイボーグのうち、空中 戦が出来るのは明日香=健吾だけである。明日香=健吾は空中を自在 に飛びまわり、次々と群がってくるコンピュータ制御の空中パトカーを左 手のレーザー銃で片っ端から撃ち落していった。どうにか、5体のサイボ ーグは首都の市街地に無事着地することが出来た。ゴルゴーンの市街地 では至る所で、大勢のネオガイア人がアンドロイドやコンピュータ制御の 様々な機械に奴隷として酷使されている。衣服の着用は禁止されているた め、全員が全裸である。そのため、全裸の地球人サイボーグたちが紛れ込 むには持ってこいだった。着地してほっと一息ついているサイボーグ達に 脳内コンピュータを通じて、イカロス司令の命令が届いた。
「そこからは、各自の力で中枢コンピュータを目指してくれ。一体でもいい から中枢コンピュータにたどり着き、破壊するのだ。そうすれば5億人のネ オガイア人植民者が救われる」
それが、イカロス司令からの最後の通信だった。危険を避けるため、高速 巡洋艦『スパルタ』は惑星ゴルゴーンの宙域から脱出したのだ。もはや、5 体のうち誰かがゴルゴーンを支配する中枢コンピュータを破壊しない限り、 二度と回収される見込みはない。優香、麗美、圭織も失神から目覚めると 1体づつバラバラに中枢コンピュータを目指すことになった。